西新井の比重が多くなってしまった。
五反野、、
駅から家までの帰り道、路地に入って人通りが少なくなった場所に「四季書房」という古本屋があった。老夫婦が営んでいて、広さは8畳くらい。店内は薄暗くて店の奥ではテレビを見ながら帳場に目を配る2人がいた。
いつもは店内の様子をチラッと横目に通り過ぎて、たまに中に入って棚にある本を見ていた。
店主のおじいさんは挨拶なく、眉間に皺寄せて正直怖いという印象だったけれど、1度、岡本太郎の本について話しかけた時に、嬉しそうな顔して饒舌になったことを覚えている。
聞くと、今の時代に若い者が本を買おうとしたことがその理由らしかった。
また別の日、どうしても欲しい本だから値引きしてほしいと頼んだら応じてくれた。
「マン・ウォッチング」という大判のビジュアル本で、この店で初めて買った本だ。(今にしてみればそこまで常連でなく、初買いにもかかわらず値切り交渉は厚かましいお願いだったな)
おじいさん、基本的には無愛想なんだけど、でも慣れてくるとその方がむしろ自然だった。
夏のある日から、毎朝通る時には開いていたシャッターが閉じたままになっていることが続いた。
貼紙などのアナウンスもなく、そんな状態で2週間ほど経った日、昼頃通ったらシャッターが片方だけ上がっていた。
どうしようか迷ったけど、ずっと気になっていたので中にむかって声をかけた。
すぐにおばあさんが顔を覗かせた。
このところシャッターが閉まっていたので気になっている旨を話すと、どうやらおじいさんが入院してしまい、1人では店を切り盛りできないので閉めていたそうだ。
ひとまず理由が分かってよかった、でも余計不安になったような気持ちで店を出た。
閉店するわけじゃない、けれど再開の見込みはない、後継ぎがいるようにもみえなかった。
そのあと引っ越すまでの間、結局シャッターが開くことはなかった。