こんにちはこんばんは。近藤です。
いやーーーーーーーー。
なんせ暑いですね。夜がなかなか寝付けなくて困ります。
網戸にしていても風が吹かなきゃあまりその効果はないし、かといって冷房を起動させるにはさすがにまだ早い。去年の冬にあまり意識せずに暖房使ってたら電気代が大変なことになって。それ以降気をつけるようにはしているのだけど、こうも湿気を含んだ嫌な暑さが続くと、気持ちもなんだかジメッとしてくるようで。いつ冷房解禁しようか日々悩み格闘しています。
そういや最近、久しぶりに小説を読みました。
貴志祐介の「黒い家」というホラー小説で、「家族ゲーム」や「の・ようなもの」などの作品も撮ってる森田芳光監督により実写化もしている作品。
本好きなんだけど、読むスピードが人より遅くて。平気で一冊読み終わるのに一ヶ月とか費やしてしまう具合だったんだけど、今回のこの本は350頁くらいあるのに1日で読み終えることができた。
結構自分にとっては驚きなんだけど、読む人からしたら1日で読破できる当たり前のヴォリュームなのかもしれない。が、まあそれはそれとして、
読みやすくて面白かった。
貴志さんの作品は他に「青の炎」「クリムゾンの迷宮」「悪の教典」なんかを読んでいたのだけど、やっぱこの人の文章はつっかえることなく読めるから、遅読の人に優しい。ありがたい。
話としてはホラーなんだけど 、映画と小説それぞれ違う部分が印象に残っている。
まず主人公が勤めているのが保険会社で、なんと著者自身も保険会社勤務の経歴があるから、その業務上のトラブルだとか社内の感情だとかが特に小説のほうではかなり詳細に描かれていて、それゆえに発見があるというか。
そもそもなぜ”生命保険”というものが存在するのか、人の死に対して懸賞金(かなり言葉は粗雑だけれど)のように貼りついた仕組みがあるのか。
亡くなった後遺族に負担がかからないようにと、そうした人間の心遣いがきっかけで生まれたものなのに、いつしか、それは、「この人が死んだらこれだけのお金が手に入る」という歪んだ、しかしそれもまた人間の感情としては本質かもしれない理由を生むことにもつながった。
実際この仕組み自体は17世紀イギリスの教会の牧師たちの中から生まれ、その後、同じイギリスに住む数学者によって制度として作られたらしい。そして更にその後100年近く経ってから日本に伝来した。それは福沢諭吉による「西洋旅案内」の中で初めて紹介された後、1881年欧米の近代的保険制度を手本として、生命保険会社が設立された、と。
感情が制度により形作られ、近代化し、そこにまた資本主義による感情の波が流れ込むことによってどんどん元の形状からは程遠い姿へとなっていく。
だから、ってつなげると無理やりな感もあるけれど、本書のコピーにある『この人間には心がない』というのはつまり、その成れの果ての姿となった人間を指しているようだなと。
それで映画のほうは、多少設定が違っていたり、端折っている箇所もあったりはするのだけど大半は原作と同じに進んでいく。そこに対しては良くも悪くもで仕方のない部分かなあと思いながら見てた。
役者は他に西村雅彦さんとか山崎まさよしさんとか、町田康さんとかも出ていて、それはそれで面白いのだけど、一番記憶に残ったのはなんといっても画作り。
構図が場面場面で「こうくるか」って思うようなものばっかりで、しかもそれが無理して奇をてらってる感もなく、自然に、でもかっこよくて。
使われてる音楽も独特で、妙にはずしてくるような、でも絶妙にシーンに対して適切な効果を与えてもいて。なんか終始そちらのことにばっかり意識が向いてしまうくらい画作りがかっこよくて、映画版のほうはそれだけが強く印象に残った。
そんくらいかな、、
あ、あと作中に出てくる言葉で「サイコパス」というのがありますが、
原作から20年以上経ったいま、そんな区別する用語必要なくなってますね。
「黒い家」
もし気になった人は、夏の入口にいかがでしょうか。