好きなように

2023年3月22日(水)

みらんさんの新曲「好きなように」がリリースされた。

 

思えば昨年の11月、まだ完成前のこの曲の音源をいただいてから今に至るまでずっと、生活のあらゆる場面で自然と口ずさんでいる自分がいた。

というのも、先に依頼されていたライブツアーのポスターを制作する時点で、みらんさんから「好きなように」をモチーフにして絵を描いてほしいという要望があった。なのでそれ以降、制作中はこの曲をループで聴いていた。

 

 

ドゥーワップ

その甲斐あってか、みらんさん本人だけでなく、周りの関係者の方にも喜んでもらえたので一安心だった。

ツアーのタイトルが「星を飛ばす」だったのと、曲中の歌詞に「帰り道」「月」というワードがあったので、夜空の中で歌うイメージで描いたドローイングを軸にしながら、色や動きを出すために切り絵や手書き文字を配置した。

 

ギロの音の抜けた感じや、楽しげなリズムの中にある少しの切なさ、強がりまではいかないけど軽やかにいようとする一筋縄ではない姿勢、みたいなものを個人的には曲から感じて。

だから、ただ単にかわいい楽しいだけのものにはならないように気をつけた。

それは例えば、夜空を描くときにベタじゃなくハッチング(細かく線を重ねるやり方)だとか、切り絵の星は尖らせてビルは都市のネオンを意識して紫にしたり(灰色だと味気なく、ピンクだと下品だった)とか、作業中に敷いていた厚紙に残る意図しない線や色の滲みを取り入れたりとか。でも文字は遊ばせてみたり。

そんな、なんやかんやある中に歌がある。星を飛ばしている。

 

 

と、

前作の説明はここまで!

ここからは今作のジャケットワークについて。

これは完成版。

 

前回のポスターに引き続き「好きなように」を聴きながらの制作。ただ一つ決定的に違ったのは、その「好きなように」自体のジャケットを描くということ。そして依頼としては「星を飛ばす」の雰囲気は残しつつも、そこからの経過を表現してほしいというものだった。

 

以下、その道程。

まずはなんでもメモ。

あらためてこの曲でどういうものが浮かんでくるのか適当な気分でラフ。それとキャラクターとして絵に落とし込むためにみらんさんの宣材やライブ映像をスケッチ。手を動かす。

 

 

シンプルな線画。

Big Thiefの「Dragon New Warm Mountain I Believe in You」というアルバムのジャケットのような雰囲気が合うかなと思って描いてみたけど、ちょっとリラックスしすぎてる感があってやめた。

 

だったら、と思って劇画風にしてみたけど昭和のフォークすぎる。

 

色を塗ってみてもグッとこない。

 

少しだけ雰囲気を変えて色を塗ってみてもやっぱダメで、

 

こういうのを

 

こうしだしたらもう迷路で。

 

 

一度気持ちをリセットするため、手の動くままに描いてみたら案外いい感じだった絵。だけどあまりにサイケなロック。

 

ギロ

 

ポスターの絵のネガポジ逆ver.

 

どうしたって前回の絵に縛られすぎているし、発想力まるでないな俺、、

そうしてゲンナリしながら何気なく描いたこの絵。この、今までとさほど変わらないようなパターンの絵のおかげで滞っていた制作に謎の活路が生まれ、その後一気に完成まで駒を進めることができた。不思議体験。

 

どうすればインパクトあるだろうとか、差別化しつつも曲に似合う服はどういう色や形なんだろうとか、そういう見かけのことに比重が傾きすぎていて、いつの間にか肝心なことを見失っていた気がする。

自分がこの曲でまず感じたものはなんだったんだろう、そうして立ち返ってみて出てきたのが「風」だった。

 

息を吸って吐いて、身体を揺らして、それが風となってどこまでも遠く届いていくような。もしくは、どこからか吹いてきた風が知らぬうちに身体の中に入って、循環して去っていくような。そういう感覚を求めていけばいいんだと思った。

線で動きを立たせた空。

 

ベタ塗りしつつ下書きの線を残してる空。


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カラーみらん隊。

 

他の素材も用意していよいよ構成。

 

風は風でも台風前日みたいな蠢き具合でボツ。絵としては好きだけど惜しい感じ。

 

この足曲がり首長のアンバランスさもかわいいけれど、その些細な引っ掛かりが今回のジャケットとしては悪い意味で作用するかもな〜と思いボツ。

 

色々と置いて動かしながらいい感じのものはいくつかあったのだけど、最終的には曲で感じた風を一番表している下の構成にした。

あとは調整。

多すぎる星はドゥーワップというよりもむしろ合唱団なので間引く。それに合わせて寄り添いながら風と遊ぶように配置。それぞれの色調や色味をメリハリつけて分かりやすく。文字も最後まで入れるかどうか迷ったけど、何も遮らないほうが画面が気持ちいいなと思いやめました。

 

そうして完成した絵をもう一度。

 

 

かわいい!!!

 

 

ついにリリースされ、見慣れたサブスクの表示画面の中に自分の絵があることに感動した。

完成版のミックスされた曲を聴いて、それまで何百回と音源を聴いていたのに心が弾んだ。

 

ちょうどその日は天気が良くて風も心地よくって、一人めでたい気分になりながらイヤホンでこの曲を聴き、一時間ほど散歩をした。