クールじゃない

ありがたいことに、ここ2年くらいは展示や制作の依頼が続いている。

たまに文章執筆の依頼もあって、それはこのブログや、ネットショップに彫刻作品を掲載する際の文章を読んだことがきっかけだったりして、そういう時は残してきた甲斐があったなと思う。

ただ、そうした依頼も全部受けることはできないので、断ることも多々ある。

 

ほとんどは制作スケジュールの都合なのだけど、会場やイベントとの相性もあったり、相手のことを信頼できるかどうか、そもそも楽しそうかどうかの気分も判断基準としてはもちろんあって。だからたまに、SNSで伸びてる系のイラストレーターとかにローラー作戦してるだけの営業定型文を送られてくると本当にげんなりする。

熱も何もない長いだけの文章に「誰でもいいんじゃん」って思わず言いそうになる。それでも一応ちゃんと断りの連絡はするけど、大抵そういう人たちからの返事は来ない。なんなんだ!

 

他にも、「いま注目の現代アート〜」とか「あなたの作品を海外に発信〜」とか、そういった言葉が冒頭にあるようなイベントや展示の誘いはまず受けない。前者は流行りだけを見てるハリボテだし、後者は錆びたルアーの釣り人で、どちらも建前は作品だけど、つまるところ売買が目的なのでつまらない。

 

一見興味を惹く内容であっても、社名を検索かけてホームページを見てみたら、あからさまにフリー素材で構成しただけの内容で、スーツ姿の外国人が乾杯してる写真しか印象に残らなかった。念のため運営会社の住所を調べてみたら看板も何もない畑が出てきた。

 

「個展開催しませんか?」とお誘いが来たので、まず会場使用の概要を訊いたら「1週間20万円です」とか。

 

海外のアパレルブランドから「コラボしませんか」という旨のメールがきて、英語出来ないなりに翻訳サイト使って何回かやり取りして話を進めていたら、あるとき「当社の代表があなたの作品をとにかく気に入ってる。今度電話で打ち合わせできますか?」ときたから、正直に「すみません。私は英語を話すことができないので、今まで通りメールでのやり取りで進めることは可能でしょうか」と返したら、それ以降パタリと連絡つかなくなったり。

 

みんなやってるソフビやラグ、陶器への展開もなんだか気乗りがしないし、ネオン管オブジェとか企業ロゴの彫刻化も俺じゃないよな、という気持ちで断ってきた。

考え方が固いと言われればそうだろうし、そんな選り好みして偉そうにと思うかもしれないけど、セルフプロデュースとは名ばかりの、ただネットで認知され出してきただけでそこになんの面白みも感じない活動をしてる人を見ていると、自分はそうならんように気をつけなきゃなと思う。

というのも、どこか表現する人には頑固でいて欲しいという自分の中での願望があるからかもしれない。シーンに対するウケとか、時代の価値観とかにピントを合わせ過ぎず、勝手にやりたいことをやっていて欲しいというか。難しいのかもしれないけど、そっちの方が絶対的に面白い。

まあとはいえ、今まで受けてきた仕事や展示で自分自身が後悔なかったかといえばそうではなく、その都度振り返って反省をしながらこんなことを書いてる。

 

お金だって生活できる分あればいいから、無理に稼ごうとする必要もない。

欲は深いほうだけど、所持金の多さでは満たされない。

もし皆が飽きて作品が売れなくなったらまたバイトすればいいし、家賃を数ヶ月滞納していて催促の電話が怖くて夜眠れなかったり、電気ガス水道止められたって絵を描くことはやめなかったわけで、そういう過去を思うと、なんか大事にしたいものを続けてさえいればどうにだってできると思える。現在朝の5:30分、深夜のテンションそのままで書いてたらこうなる。

 

ブログ以外では日々淡々と作品画像だけを載せているアカウントなので、人によってはそれが「クール」な人物像を想像させるらしいのだけど、実際はこんなにも拗らせていて、むしろ相当面倒くさい人物ですよってことを、これからもブログでは示していきたい。