ここは色のないせかい。シマウマは いつも ひとりぼっち。
夜になるとまっくら。おめめが パッチリ シマウマ。
ときには さびしくなって なみだが ポロリ。
そんなある日、とつぜん大きなじしんがおこったのです。
ドドドドド・・・
グラグラグラ・・・
どこにもかくれる場所がないシマウマ
まるくなって ブルブル ふるえていました。
しばらくして じしんはおさまりました。
すると、うしろのほうから「ボトン!」という音が きこえました。
おそる おそる ちかづいてみると、
そこには まっかな りんごが 落ちていました。
シマウマには これが なんなのかわかりません。
でも とてもいいにおいで きれいでした。
せなかがつめたいことに気づいて、見上げてみると
ポロポロ あめが ふっていました。
こんどは足がくすぐったくて下を見ると
ピョコ ピョコ くさが 生えてきています。
ポカ ポカ たいようが かおをだしてきた。オレンジ色につつまれて。
・・・おや? なにかが とんできました。
ツバメです
ぐるぐると シマウマの 上をとんでいます。
しばらくすると どこかにヒューと行ってしまいました。
トコトコ あとを おいかけるシマウマ。
どこにいくのか わからないけど ずっと。
キラキラ ポカポカ ピョコピョコ
ジョロジョロ サラサラ ピカピカ
そこには、今までシマウマが見たこともない せかいが ひろがっていました。
シマウマは とてもしあわせそうです。
たくさんの色にかこまれて、もう、ひとりぼっちでも ないのです。
・・・ほら、夜だって こんなに明るいのだから。
2011年6月20日。
この絵本は、僕が大学一年生の頃、東日本大震災があった年に描いたものです。
当時は静岡に住んでいて、幸運なことに直接的な被害はなかったものの、連日報道される言葉や映像を受けて、半ば衝動的に制作しました。
どういう気持ちでいることが正しいのか、普段と変わらないように生活をしているけれど、一変してしまったあの場所のこと、それでもなんでも自分は絵を描いている。今にしてみれば、自己治癒のようなものだったと思います。
完成したものを大学の非常勤の先生に見せたら、「せっかくだから絵本系のコンペに出してみなよ」と勧められ、文芸社が主催する絵本コンペに送ってみた。
結果としてはダメだったのだけど、それから数日後に文芸社から電話がかかってきて「絵本を出版しませんか?」とのこと。え、まじ!と思って浮足立ったけど、よくよく話を聞いていったら、自費で50万出して出版しませんか?するなら私たちの会社でお手伝いしますよ!の連絡で、どうやら落選者全員に片っ端からかけているだけのただの営業電話だった。かなしかった。
ユーモアのつもりで書いたデタラメ奥付、骨格がごちゃごちゃな絵、丁寧にしようとしてるけど下手な字、つくってから10年以上経っているけど、やろうとすること、していることは、さほど今と変わらんなと思った。
最近は「やさしさ」について考えることがあり、そうしたときにふと、この絵本のことが思い浮かんだので掲載してみました。